家に帰るとブラッシングを済ませ、夫が帰宅するといよいよふたりの入浴タイムだ。
バスタブに30センチ程お湯をためTシャツに短パン姿の夫はまず、ビッケを抱えていく。普段はやんちゃなくせに、決まってこの時はシッポがお腹まで下がってビビっている。
勢いの良いシャワーの音に怯え硬直状態、それがまたなんとも可愛いのである。「毛がキュッキュッてなるくらいすすぎもしっかりね!」グルーミングを本業としている友人から教えられた言葉をそのまま夫に投げかけ、タオルを片手にブロウの準備に取り掛かる。結婚後ふたりの入浴タイムは自然と共同作業になった。
もしかして これ、赤ちゃんの沐浴の予行練習かもしれないな?
夫には本当に感謝している。新婚当初 奥様業に憧れていた私は家事の一切合切を取り仕切っていた。それを当然と思っていたし、喜びに感じていた。でも家事はエンドレス。365日休みはないのだ。私の仕事の分量を増やそうと思ったらどうしても夫の理解と協力が必要になってくる。食事が済んだら食べっぱなし、ではなく茶碗を洗い場に運んでくれたりテーブルを布巾で拭いてくれるだけでもどんなに嬉しい事か。不思議なもので、この思いやりを感じた瞬間に体内のストレス数値は一気に0を指す。こうして欲しいと直訴したわけではないけれど、生活の中で夫は自然な形で手を差し伸べてくれる。
犬の世話もそう、家事のちょっとした手伝いもそう、夫の思いやりに心がジーンとする。子育ては凄く大変─という話をよく耳にする。犬の世話なんて比べ物にならないらしい。そんな日が訪れても私は夫の何気ない思いやりに支えられて、きっと乗り越えられるはず。
ブルブルッ!曇りガラスのドアに大量の水しぶき。どうやらビッケのシャンプーが終わったよう。いつもより時間がかかったシャンプーから開放されて、シッポがいつものように天に向かってアンテナだ。夫の方はといえば水も滴るいい男!Tシャツは汗とビッケがかけた水しぶきでびっしょり。シャンプーの3回に1回は私がこの、水もしたたるいい女!になってしまうのだけれど、このずぶ濡れは仕方の無いこと。あーあ誰かガソリンスタンドの洗車機か、キッチン食洗機のような全自動犬洗い機を発明してくれないかしら?
「さあ、今度はコットンだ!」夫の太い声がバスルームに響き渡った。
齋藤陽子/文
花岡道子/イラスト