湯の国web TOP » 湯煙コラム » 木村祐一・きむらゆういち「お風呂で考える○○」


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 何も考えないためのもの、それが風呂っちゅうもんではないのか。このコラムへの執筆依頼がきたときの、まずは率直な感想である。大体において、私は自分以外の人間や物事に対し、頭が堅い。それは、“笑い”というものの構造が、対象となるもの、扱うものについて、ある意味、「決めつけ」なるものを基にして成り立っていると考えられるからである。ほら、また堅いでしょ。例えば、師匠と弟子のコントがあるとする。弟子は師匠に抗えない、という前提や、師匠は多少の無茶を言うし、時には仕事内容とはかけ離れた用事を頼んだりもする。そういった「決めつけ」があるから、弟子が暴言を吐いたり、平気で師匠をド突いたりすると、それが「ボケ」となり、笑いが生まれるのである。師匠が合コンのセッティングを頼んだりね。(あり得るが、これは)まぁ、私の「決めつけ」る理由はこれくらいにしておく。

 さて、風呂である。10才の時に親が一戸建を買うまで、アパート暮らしだった木村家は、銭湯通いであった。9才の木村少年は銭湯に行く度に考える事があった。それは、「家がお風呂やさん(当時はこう呼んでいた)の子は、店のお風呂に入るんやろね?」という事である。もし入るとしたら、その家の親は、一体何時頃、子供達を入れるんだろう。客が全て帰った後?それでは小、中学生にしてはあまりにも遅過ぎる。ならば開店前?いいや、入り口にたまる、一番風呂を楽しみにしている老人達を思う時、実はその前に思春期の若者を先に使わせている、という事実を秘密にできるほどの悪人であったなら、銭湯経営などやってはいけないだろう。ではいつなんだ!!本当はわかっているんである。生活スペースにも、普通の家と同じような風呂があるであろうということは。でも、それでは面白くもなんともないではないか。妄想は金だ。なんちゅう格言があったかなかったかは知らないが、木村少年にとっては、そんな時間がたまらなく心地良かったんである。
 同時に、妄想からの連想が始まる。漁師さんは魚を食べる。それどころか、一番うまいところを知っている。中華料理店の子は、あっさりしたものが好き、と言っていた。散髪屋さんの子は、家で散髪してもらっている。歯医者さんの息子に虫歯があった。ふとん屋さんの子は、ベッドで寝ているという。パン屋さんの子は、朝はやっぱりパンを食べてくるらしい。では木村少年は?家の商売は、留袖の柄に金加工を施す仕事である。生活の中では殆んど関係ない。だからか。だから他の商売の人の生活が気になるのか。それにしても、自分ちの商売を生活に利用したり、毛嫌いしたりするのは、個人の好みなんだなぁ。
 などと、考えにふけっていた木村少年を、およそ30年たった今頃になって思い出している。これが、私がお風呂で考える○○である。
 
文/木村祐一
イラスト/花岡道子

木村祐一(タレント・放送作家)
1963年京都市生まれ。1987年、今宮こどもえびす新人漫才コンクールでこども大賞、NHK上方漫才コンテストにて最優秀賞を受賞。その後、「わらいのじかん」(ANB)「ダウンタウンのごっつええ感じ」(YTV)、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」(NTV)などの人気番組に出演。現在はタレント活動のほか放送作家としても活躍しており、「ダウンタウンDX」などのレギュラー番組を手がけている。また舞台では、ルミネtheよしもと「7じ9じ」ネタ・新喜劇(座長)にレギュラー出演中。
出演情報:http://www.fandango.co.jp/lumine/






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