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湯煙コラム

Vol. 66 山口晃

汚れたくなければフロに入るな!?心地よく過ごすための作法指南

山口晃(やまぐち あきら)

1969年東京生まれ、群馬県桐生市に育つ。96年東京芸術大学大学院修了。時空の混在し、古今東西様々な事象や風俗が、画狭しと描き込まれた都市鳥瞰図・合戦図などが代表作。広告、パブリックアートも手がけ、五木寛之氏による新聞小説『親鸞』(全国県紙、ブロック紙計44紙に掲載)の挿絵も担当した。
2011年NYのジャパン・ソサエティにて「Bye Bye Kitty!!!」展(アメリカ)に参加、同年3月ジャパン・クリエイティブ・センター(シンガポール)にて個展「Singa-planet」を開催。本年メゾンエルメス8階フォーラム(東京)にて個展「望郷TOKIORE(I)MIX」を開催した。
 
一人暮らしを始めてから結婚するまでの十何年かは銭湯通いでした。
家にフロがないと云うのは、不便な様でいて此れでなかなか便利なのです。何が便利といって、何もしなくて良い点便利至極です。フロが無い訳ですから、正確には「何もできない」と云う事でしょうが、まあ一緒です。浴槽洗いも、水張りも、湯加減をみるのもせずに済むのは、随分楽でした。
此れで銭湯が遠いと目もあてられませんが、私の下宿から、銭湯へは100歩と離れていませんでした。下手な温泉旅館で部屋から大浴場へ通うよりも近い位です。なので、広い家敷の外廊下を通って浴室へゆく様なものと思えば、何やらリッチな心持ちにすらなれました。
ぜんたい、ワンルームにフロを付けると云うのが過剰な事です。あれでは部屋がシケって仕方ありません。そんな事をするから、ファンシーケースの一張羅に、カビの生える心配をする羽目になるのです。
費用の面から言っても、フロが付けば家賃の一、二万は上がりますから、そこにマキ代水代が加われば毎日入っても銭湯の方が安あがりです。
少々無理に便利を言いたててみましたが、そもそも毎日入らないたちなので不便が無かったのです。「毎日入浴しないなんて、フケツ!」と仰る女性もおいでかもしれませんが、フロと云うのは入れば入る程汚れるようになるのです。何のことやら解らないかも知れませんがつまり、毎日入る方は一日でめいっぱい汚れがたまるので、2日目は臭いだすのですが、3日に一度の方は3日かけてめいっぱい汚れる様になるので、3日目でもそれ程臭わないのです。十数年来の経験から言って、体はその辺り、ちゃんとわきまえています。
そうは言っても、フロ嫌いな訳では無いので、銭湯は楽しみでした。此の頃では入り方を知らない方も多いので幾つか述べてみます。
体を全部洗ってから入る方が居ますが、あれは間違いです。そもそも泥だらけなら兎も角、衣服に隠れた体は大して汚くないのです。それよりは手の平の方が余程汚いし、何より尻の穴の大腸菌の数は桁違いです。たまにあそこを洗わずに入る方が居ますが、公衆衛生上怪しからぬ事です。ですから、下をきちんと流したら、後はかけ湯をして湯に浸かれば良いのです。そうして浸かっておれば余計なアカがふやけてきますから、其れからおもむろに湯から上がって軽く洗えば十分です。
湯船にアカが浮きますが、そんな時は釜番さんが心得ていて湯を熱くします。たまらず客が水でうめた分、湯が溢れて浮いたアカが流れ去ります。うんと熱い時はうめてよいのです。それでも時間の終いの方は湯が淀んできますが、実は其の方が湯が円やかで体にも良いのです。
今どきはカランの他にシャワーも付いており便利が好いのですが、頭を洗う間中あれを流し放しの方が居て感心しません。お風呂屋さんの為にも、いちいち止めたいものです。
そして洗い終わって再び湯に浸かったら、カランから汲んだ上がり湯を2、3杯かぶって体を拭ってからあがります。銭湯を出る時は番台さんに礼の一つも言いましょう。「いただきました」とか「お世話さま」とか、夜だったら「おやすみなさい、ありがとう」とか、何でも良いのです。折角体がさっぱりしたのだから、そう云う事を言ってみると、心もさっぱりするのです。

まあ、当たり前の所を書いてみましたが、当たり前の事ほど記録には残りませんから、此んな事でも其の内面白く読まれるかもしれません。ちょっと寂しいですね。ではご免下さい。

文/山口晃(やまぐちあきら)

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©YAMAGUCHI Akira / Courtesy Mizuma Art Gallery
「百貨店圖 日本橋 新三越本店」2004
紙にペン、水彩 59.4×84.1cm
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©YAMAGUCHI Akira / Courtesy Mizuma Art Gallery
成田国際空港第1ターミナル南ウィング4階 壁画の為の原画より
「成田国際空港 飛行機百珍圖」2005
紙にペン、水彩

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