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湯煙コラム

Vol. 64 武内英樹 監督

ローマっ子にも大好評!『テルマエ・ロマエ』は“風呂に入りたくなる映画”

武内英樹 監督(たけうち ひでき)

1966年10月9日生まれ。映画監督、演出家、プロデューサー。早稲田大学卒業。1990年フジテレビジョン入社後、『みにくいアヒルの子』ほかテレビドラマの演出を多数手掛ける。『のだめカンタービレ』でザテレビジョン ドラマアカデミー賞4度目の監督賞、音楽賞を受賞。世界のドラマの祭典ソウルドラマアワード2007では、最優秀監督賞、最優秀音楽監督賞、最優秀作品賞を受賞。最優秀監督賞は日本人初。映画版『のだめカンタービレ 最終楽章 前編 』(2009年)監督、『 のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(2010年)総監督を務める。
2012年4月28日より全国東宝系で公開の映画『テルマエ・ロマエ』監督
『テルマエ・ロマエ』公式サイト
 
4月28日(土)より全国公開が始まった、映画『テルマエ・ロマエ』。それに先立ちイタリア、ローマと「ウディネ・ファーイースト映画祭」でワールド・プレミア上映を果たし、現地でも大変好評でした。

イタリア人にとって、劇中に散りばめられた日本の風呂シーンが、エキゾチックであり魅力的に映ったようです。銭湯の番台、脱衣かご、風呂桶、そして湯上りのフルーツ牛乳…。まさに主人公ルシウスと同じく、一つひとつに感嘆の声が上がっていました。それ以上に彼らに驚かれたのは、街の銭湯でも山奥の温泉でも、日本の公衆浴場ではだれもが本当の意味で「裸の付き合い」ができること。ヨーロッパに「スパ」「テルメ」など湯治場はいくつもありますが、すべて水着着用ですからね。

ほかにも洗浄便座のある清潔なトイレ、子孫繁栄を願う奇祭「金精様」など、シーンごとに目を輝かせて大爆笑。映画祭では上映中に拍手が4回も巻き起こり、私自身とてもエキサイティングなひとときを過ごしました。
本場のローマっ子たちがこれほど作品にのめり込んでくれたのも、エンターテインメントの枠を超えるほど、場面の「作り込み」にこだわったからのような気がします。特に古代ローマのシーンはできる限り史実に、と事前に現地入りし、カラカラ浴場ほか遺跡を見学したり、ティボリにあるハドリアヌス帝の「ヴィラ・アドリアーナ(別荘)」を訪れたりして、全体の雰囲気だけでなくそのディティール…たとえば当時の建築物に使われた部材の質感まで再現する努力を怠りませんでした。

まるで一つのセットのように見えるこれらのシーン。もちろんある部分はチネチッタで撮っていますが、公衆浴場の場面などは、実は海外から材料を調達し日本の川崎でセットを組んでいるんです。ローマの町中いたるところで見かけた重厚な歴史の足跡や、数々の歴史的名作を生み出したチネチッタを使った撮影の感動がスタッフに宿り、形として結実したものといえるでしょう。ぜひ、細かいところまでお見逃しなく。
こうしたストイックさの一方で、驚くほどのユルさを持つのも、見どころの一つかもしれません。なかでも劇中に出てくる「平たい顔族」つまり「日本人」の老人たちがかもし出すなんとも言えない味わいに、「あの人たちはいったい誰?」「どうやって選んだの?」と聞かれることもしばしばです。彼らは、オーディションで選ばれた平均年齢80代の精鋭たち。当初は60代でキャスティングを考えていたのですが、オーディションしてみると現代の60歳はまだまだ元気すぎて原作のイメージに合わない。そこで70代に声をかけたところ、もう一歩。そして、ついにあのフレッシュな魅力漂う(笑)80代へ行きついてしまったわけですね。僕自身、ルシウスと同じくらいに老人たちが主役だと思っています。
映画『テルマエ・ロマエ』は、場所と時代、さらに立場をも超越した彼らの、風呂を通した温かみあるやり取りこそが命。すべての人間を癒してリフレッシュし、明日への活力を与える風呂の素晴らしさをディープに描いたつもりです。楽しく大笑いしたい人にはもちろんのこと、古代ローマの歴史に興味がある方にもおすすめですし、観終わったあとは、こんなに素晴らしい風呂文化を持った日本人であることをあらためて誇りに思ってもらえるはず。風呂に入りたくなる映画『テルマエ・ロマエ』を、みなさんもぜひ劇場でご覧くださいね!

文/武内英樹(たけうち ひでき)監督


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