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入浴剤が生まれる場所、『バスクリン研究所』訪問記

入浴剤が生まれる場所 バスクリン研究所訪問記


2010年9月、ツムラ ライフサイエンス株式会社は株式会社バスクリンに社名を変更しました。入浴剤「バスクリン」が世に出てちょうど80年。ついに看板商品が社名という頂点にまで登りつめました。バスクリンは言わば入浴剤の出世頭とも言えましょう。 湯の国としては前々からバスクリンの研究所訪問を夢見ていたので、これを機会に取材依頼をしてみたところ、バスクリンさん、快くOKしてくださいました。ということで、早速おじゃましてきましたよー。

新研究所のてっぺんには、「BATHCLIN」の文字がバスクリンカラーの緑のネオンでまたたいておりました。 入浴剤の歴史は意外に古く、明治30年に当時の津村順天堂<現(株)バスクリン>が出した「浴剤中将湯」が始まりです。「浴剤中将湯」は体が温まると大好評を博すも、夏場には「温まりすぎる」との声も。そこで夏専用入浴剤として発売されたのが、後に社名となる「バスクリン」でした。

お祝いの胡蝶蘭とバスクリンの共演バスクリン以降も津村順天堂の「お初」は続きます。昭和47年には赤いキャップに黄色いボトルが印象的な日本初の浴槽洗浄剤「バスピカ」を発売。昭和62年には安定性の高い白濁タイプの粉末入浴剤を発表し、一躍温泉タイプ入浴剤のブームを起こします。今では当たり前となった白濁入浴剤も、バスクリンさんが本家本元!最近でも「きき湯」や「バスクリン カラダプラス」など、新しい技術を取り入れた入浴剤を続々世に送り出しています。

そんな老舗入浴剤メーカーの研究所とはいったいどんな所なのでしょうか!?伺ったのは「(株)バスクリン つくば研究所」。まだ出来たてホヤホヤの新研究所には、移転を祝った蘭がたくさん並んでいました。今回お話を聞かせてくださったのは、調香師でもあり医学博士でもある綱川光男さん、温浴効果の測定を担当されている鳥居和樹さん、製剤開発を担当されている杉浦満さん、香りを作る調香師の荘司博行さん。みなさんユーモアたっぷりのお話上手で、始終笑いが絶えない取材となりました。

通路のガラスケースには歴代の商品がずらり。「なつかしい!」を連呼し、大興奮の湯の国スタッフ。

BATHCLIN まずは香りの話から…

入浴剤の三大要素(香り、色、成分)のうち、まずは香りの話から。おじゃましたのは香りが生まれる場所「調香室」。ドアを開けると、ポワーンといい香り。まず目についたのは、ローマのコロッセウムばりの棚。ズラリと並んだ香料は、そりゃもう圧巻です。

三名の調香師がいるのはバスクリンだけ! こちらが初代調香師の綱川さん 正直驚きました。入浴剤メーカーに調香師さんがいるのは当たり前だと思っていたのです。ところが!入浴剤メーカーは数あれど、社内に3名の調香師が在籍しているのはバスクリンさんだけなんですって!!! ちなみに、現在は商品開発の長である綱川さんが初代の調香師なのだそうですよ。調香師を社内に在籍させているのは、バスクリンさんの香りへのこだわりの表れです。製剤開発の杉浦さんいわく、製剤の形状によって一番適した香りを作ったり、ギリギリの段階まで調整を重ねることができるのも、社内に調香師がいるからこそ。この製剤チームと調香チームの密なやりとりが、クオリティの高い製品を生み続ける秘訣なんですね。

香りは風景を描くように作られる これが現地で撮った写真のファイル!荘司さんは、調香は絵を描く感じに近いと言います。荘司さんが担当している「日本の名湯」は温泉に行った気分の再現を命題に作られていて、開発チームは実際に各温泉地を巡っています。その際、荘司さんが最も大切にしているのはその場の空気感。まわりの風景やその土地の情緒。訪れた時の季節感。そうした“その場の空気”を脳内にインプットし、それを香りとしてアウトプットする……例えば、水辺にある温泉ならアクアマリン系の香りを加えて、古い街並の温泉街なら古い木の香りを加えて、というように。だから、視察の際には写真や動画をたくさん撮ってきて、調香室ではそれらを見返しながら作業を進めるそうです。

新製法はカプセル化! CMには藤原紀香さんが出演していました 調香師の荘司さんに「最近の自信作は?」とお尋ねしたところ、「最近だとバスクリン カラダプラス」とのお答え。「生ゆず搾りの香り」は皮ごと搾ったようなみずみずしい生の香りを。「新緑イオンの香り」は土、木、空と一連の風景を想わせる香り(例えば木々だけでなくかすかに土の香りを含ませるなど)を出すのに苦心したそうです。とにかくナチュラルでフレッシュな香りを出したくて、こだわりはじめたらとまらなくってしまったそう。その甲斐あって、これまでにない“弾けるような香り”が完成。ところがこの“弾けるような香り”という表現、「バスクリン カラダプラス」においては決して比喩ではなく、実際に香りが弾けているんです。というのも、「バスクリン カラダプラス」ではスプラッシュエアという新技術が使われていて、香りを1ミリ以下のカプセル化し、それがお湯に入った瞬間弾ける仕組みになっています。試してみると、たしかにフレッシュな香りがするーー!この技法、「きき湯」のシュワシュワが元になっているんですって。

BATHCLIN 続いて色と溶け方のお話です

香りの次は色と溶け方のお話とまいりましょう。ズラリと並んだ浴槽たち。ここは「入浴剤評価室」。入浴剤が実際に使用されるシーンを想定して、色味や溶け具合、湯ざわりなどをチェックするところです。奥には実際に入浴できる設備も完備されていましたよ。

溶け方の美学 きき湯を投入する製剤開発の杉浦さん バスクリンさんの最近のヒット作といえばやっぱり「きき湯」!!!ただいま生産が追いつかないほどの人気ぶり。開発者の杉浦さんは湯船にきき湯を落としながら、「きき湯は浮かず沈まず中間で、踊るように発泡するのが特徴です。浮き上がってしまわないように発泡させるのがむずかしくて。一番美しい発泡をめざして試行錯誤しました」と言います。説明を聞きながら湯船をじっと見つめると、たしかに、いったん沈んだ粒がユラリと中間まで浮かんでシュワシュワしてる! ちなみに、「きき湯」は現在6色(種類)出ていますが、開発担当の杉浦さんは“虹の7色”を夢見ているとか。新色が発売される日も近いかも!?

あらゆる明るさでチェックしています! 照明を落とし、かつしゃがんだ角度から色を確認する杉浦さん 「入浴剤評価室」の照明は明るさの強弱が調整できるようになっています。これも全ては入浴剤をチェックするため!照明の明るさは家庭によって異なるもの。だから、あらゆる明るさで湯色を確認してみるそうです。「なるほど〜」と感心していると、杉浦さん、今度は立ったり座ったりし始めた。「どうしました?」と尋ねると、「白濁タイプは角度によっても色味が違ってみえるので、いろんな角度から確認するんです」とのお答え。なんという細やかさ。感心を過ぎてもはや感激の域!

BATHCLIN パッケージにもご注目!

うーん この写真で伝わるでしょうか?二重構造になっているんですよ、これ調香室の片隅に置かれていた謎の容器。きき湯の容器なのだけど、半分に切り取られている……なぜ? 聞けばバスクリンさん、容器にもこだわりがあるそうな。ちなみにバスクリンの楕円形の容器、あれも女性が片手で持ちやすいように計算されているそうです。スバラシイ!

パッケージにもこだわりアリ! 容器について解説してくださった調香師の荘司さん 実はバスクリンの入浴剤はどの容器にも特殊加工が施されていて、きき湯の容器はそれを説明しやすくするため、荘司さんがわざと切り取ったそう。どれどれ?実際に断面を見てみると……おお!確かに二重構造になっている!綱川さんいわく、香りは逃げて行くもの。よくパッケージ越しに香りのする製品があるけれど、あれは現在進行形で香りが抜けているということ。だから、バスクリンではわざわざ容器に加工を施して香りを守っているそうです。そういえば、お風呂に入れてみたら香りがほとんどしなくてガックリ……なんて入浴剤、ありますよね。その点バスクリンさんは香りの持続性にもこだわっていて、特に「バスクリン」は4人家族が順番にお風呂に入っても最後まで香りが続くよう工夫されているそうです。

パッケージ裏もぜひぜひ読んで! 「日本の名湯」のパッケージ裏には、詩情あふれる一節が書かれているのをご存知でしょうか? 例えば<秋田 乳頭>には「乳頭山からの涼風が運ぶ、心落ち着く緑葉の香り。山深く一面の雪景色を想わせる、真っ白な乳白色のお湯です」 目を閉じると情景が浮かんできますよね。実はこの文章、コピーライター……ではなく、担当した調香師の方が書いているんですって! 調香師さんの意外なお仕事発見です。ちなみに、「バスクリン」の中ふたシールには担当者のメッセージが!全部で36通りあって、Webでは各担当者の似顔絵を見ることができます(※リンクあり)

BATHCLIN バスクリンの品質はこうして維持されている

いろんなデータを測定する「人工気候室」専用のお風呂もあった!どの入浴剤も、発売されるとそれで終わりではなく、よりよいものにするために常に改善改良がなされているそうです。また、配合する成分は肌ざわりの善し悪しだけでなく、浴槽や排水管に対してどうか、環境に対してどうか、というところまで考慮して選ばれています。こういう努力、こういう気遣いによってバスクリンの品質は維持されているんですね。

入浴剤に消費期限はあるの? この扉の向うが湿度76%温度40℃の世界、ここで6か月間保管されます 湯の国スタッフの眼鏡が真っ白に!これには大笑い 前々から疑問に思っていた事を、ここぞとばかりに質問してみましたよ。「入浴剤ってどれくらい持つのでしょうか?」 みんな一度は気にしたことあるんじゃないかしら?綱川さんのお答えは「バスクリンでは特別記述のある製品をのぞいて、三年間の品質保証をしています」 。バスクリンさんでは、製品が完成すると、過酷な環境での6ヶ月間の安定性試験を行っています。見学させてもらったのは、その温度40℃湿度75%という安定性試験室。ドアを開けると、まさに蒸し風呂状態。(湯の国スタッフの眼鏡は一瞬にして曇った!) この他、想定されるあらゆる保管状況で試験が行われ、全てをパスした商品だけが世に出るというわけ。開発から発売までの道のりはなかなか険しいんですね〜。

体を温めるって大切 f温浴研究を担当されている鳥居さん。おもしろい実験データがたくさんありました。 バスクリン研究所では入浴剤の開発はもちろん、温浴がもたらす効果についても調べていて、研究所の中には「人工気候室」という名の測定専用ルームがあります。データのとりまとめをしている鳥居さん曰く、「やっぱりお湯につかって体を温めるって大切。シャワーで済まさずお風呂に入ってほしい」 まさに湯の国が主張してきたことと同じじゃありませんか!バスクリンさんと湯の国がシンクロした瞬間です。なんだかうれしい。バスクリンさんの強みは生薬と温泉成分。「バスクリン」にも「日本の名湯」にも「きき湯」にも、その強みは存分に活かされています。温泉を科学して80年。バスクリンさんの入浴剤には科学的に裏付けられた確かさと、作り手たちの熱い想いが見事にブレンドされていました。入浴剤万歳!お風呂万歳!

■編集後記
バスクリンさん、ありがとうございました!当初1〜2時間を想定していた取材でしたが、終わってみれば4時間も経っていてびっくり!!綱川さん、鳥居さん、杉浦さん、荘司さん、にはほんとにいろんなお話を聞かせていただきました。ちなみに、入浴剤で人気の色は緑色なのだとか。そう、まさにバスクリンの色!色の話しも、香りの話しもどれもこれも興味深く、老舗のこだわりに脱帽!想像していた以上にいろんな行程があり、いろんな工夫がなされ、そしてみなさん楽しそうに研究をされていて、感動すら覚えたのでした。バスクリンさん、ありがとうございました。
(取材/新井昌子、鍛冶紀子)

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